2017/12/28

「未来の年表」を読んで、人口問題はとても難しいが解くべき課題だと思った。

皆さんは出生率の数字を見たことがあるだろうか。

これは、日本の合計特殊出生率の推移グラフだ。
「合計特殊出生率」とは、15歳から49歳までの女性が出生数を、それぞれの人数で割った数字(出生率)を足し上げたものだ。
つまり、合計特殊出生率とは、

(15歳の女性が産んだ人数÷15歳の女性の人数)+...+(49歳の女性が産んだ人数÷49歳の女性の人数)

のことだ。

このグラフを見ると、合計特殊出生率はここ数年1.5以下を下回り推移している。更によく見てみると、2005年に1.26という最低数値を記録して以降、直近の2015年は1.45とやや回復傾向にあるように見える。
ただ、よく考えてみてほしい。少なくとも現段階では男性は子供を産むことができない。出生率が1.26にせよ1.44にせよ、2を大きく下回っているので、長期的にみて人口を維持し続けるために必要な人数を産むことはできていない。
更に言うと、再生産率(1人の女性が産む女性の平均数)は、0.67程度らしい。

まとめると、こういうことだ。

・1975年以降、日本では、人口を維持する人数を産むことができていない。
・しかも、子供を産むことができる女性の数も維持できていない。


話を変えて、国民希望出生率という指標がある。
その名の通り、国民が望む子供の数を産むことができたとした場合の出生率だ。国民希望出生率は安倍首相が掲げる「ストップ少子化・地方元気戦略」によると1.8らしい。
つまり、(現段階で様々な制約はあるが)仮にその制約を解消できたとしても、今の国民が望む人数をたとえ産んだとしても、それでも日本の人口は減っていく、ということだ。


対して、「今後は移民を受け入れ、人口を維持すればいいのではないか?」という論もあるかもしれない。

このグラフを見るまで、僕は「そうはいっても少子高齢化って日本や先進国だけの問題だよね」と思っていた。しかし、この数字を見る限り、多くの地域において、出生率の低下は起こっている。
したがって、人口減少の課題に直面する国からの移民需要は今後高まるのではないかと思う。

あるいは、仮に日本への永住権を与えることで移民を増やすことを目指すとしよう。でも、移民が日本国民になったときに子供を産むかどうかは分からない。「出生率が高い国から来てるのだから、きっとたくさん産んでくれるんじゃない?」という、なんとなくなイメージでしかない。

長々と書いてきたが、要は「日本の少子高齢化は止められない」ということだ。日本の人口はこれからも抗いようもなく減り続ける。


「日本の未来年表」という本を読んだ。

この本の主張も同じだ。日本の少子高齢化は止められない。本書では、この主張のもと、

(1)この先何が起こるのか?
(2)どうすればいいのか?

を簡潔に整理している。

(1)の「これから起こること」については、数年単位でのブレは多少あれど、かなり確からしいように思えた。(人口が減り続ける未来がくることはほぼ間違いなく、その各種統計数値から紐解かれたことだから)
例えばこんなことが起こる。(※重要なものを抜粋したとかではないです)

2019年をピークとして、IT人材の供給量が減り続ける

労働力不足の解決策として、AIの活用が謳われているが、2019年をピークとして、IT人材の供給人数は減少する。2017年現在でも、IT人材の需要は104.8万人に対し供給は92.2万。つまり充足率は88%とかなり心許ない。IT人材=AI人材ではないものの、労働力不足の解決策としてのIT人材のそもそもの不足は大きな課題だ。

2021年以降、インフラが維持できなくなってくる

日本政策投資銀行がまとめた「わが国水道事業者の現状と課題」によると、
管路の耐震化適合率は34.1%であり、更新投資額は2021年以降上がり続け、2050年には1兆4143億円/年もの額が必要とされている。
一人あたり一日平均給水量は2004年は324リットルだったが、2012年は304リットルへと減少。
つまり、節水効果の高い家電が増えているのもあり、水道の利用量は減っている一方で、現在の水道インフラを維持していくためには、(A)水道料金を(めちゃくちゃ)値上げする、(B)地域によっては維持を諦める、くらいしか方法がない。

輸血用血液が不足する

本書で初めて知ったが、輸血用血液の8割ががんなどの手術に使われているらしい。(交通事故などの怪我に使われるのは、わずか3.5%)
2027年、高齢化の影響で輸血用血液の需要量がピークを迎え、それには545万人の献血が必要らしい。しかし、献血者は減少し続けているので、このままだと86万人分の血液が足りなくなるそうだ。

介護・医療難民の増加

国土交通省が2014年に公表した「国土のグランドデザイン2050」に、自治体の人口とサービス施設の存在確率の関係が載っている。

ざっくりいうと、例えば、一般病院が(経済合理性を満たした上で)その自治体に存在するのに2万7500人の人口が必要らしい。少子高齢化とともに、地方自治体の殆どで人口は減少する。対して、東京都の高齢者向けベッド数は75歳以上人口1000人あたり100と、全国平均の121を大きく下回るそうだ。まとめると、

地方:自治体規模縮小による介護・医療施設の閉鎖
首都圏:介護床数の不足による介護・医療難民増加

ということが起こる。

2030年以降、食糧確保が困難に

日本の農業就労人口は年々減少している。それと同時並行で、平均年齢は上がり続けている。
一方、世界に目を向けると、この先も人口は増え続けるので食料需要量は増え続ける。気候変動など、輸入先の何らかの事情により輸出余力が低下した場合、日本国内でも食糧不足が起こるかもしれない。

居住地域の無人化による不法入国者増加

先述の国交省「国土のグランドデザイン2050」によると、日本領土を1キロメートル四方のメッシュで区切り、そのうち現在居住エリアとなっているメッシュ18万のうち、2050年には19%が無居住エリアとなることが予想されているらしい。
とくに排他的経済水域の根拠となる国境離島が無人化すると、不法入国者の増加につながる可能性がある。あるいは、自衛隊や海上保安庁による監視を強化するとしても、防衛費の増加につながり、公費の負担増につながる。

さいごに

この本を読むまで、僕は人口問題に無関心だった。遠い未来の話だし、取り組むとしても時間がかかる話だし、ぱっと見、なんとなく地味なトピックやなあと思っていた。大事な気はするけど、テンション上がらんなあとも思っていた。ついでに言うと、そういえば数週間前に上司が「雇用の問題は結局人口問題だと思ってるんよ」みたいな話をしてくれて、僕は「まあそうかもしれへんなあ」と思いながらもそのときはそこまで興味がなく若干聞き流していたので、「そうですねえ」みたいな反応をしていた。
ただ、いまは、雇用の問題も然り、世の中のその他多くの問題のもとをたどると、人口問題に行き着くのではないか?と思っている。日々の仕事において、様々な視界の様々な課題について考えることはあるが、視界を広げ、また、数年のスパンでみれば重要な問題ではないことも多い。このままだと日本人は減りつづけ、日本はなくなる。

いや、なんとかしないとマジでヤバイ

今回、「未来の年表」を読んでみて、これまで目を向けてこなかった統計を見てみたり、気になったことを色々調べる機会をつくることができた。
本書を読んでみて、その上でこのグラフを見てみて、ものすごくショックで、なんとかしないといけないと思った。

人口問題に対するHackを考える。これをしばらくのテーマとしようと思う。(もちろん日々の仕事はするけど。)

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